2006年03月31日
おりこうさん おばかさんのお金の使い方
本屋にはあまりに多くのマネー関係の本(いい本も、オススメできない本も)がおいてあります。だからマネーの勉強をしようと思って本を探すのも一苦労です。そこでここでは、私が買ってきて読んでみた本を簡単に紹介してみようと思います。あなたが本を選ぶ際の参考になれば幸いです。
第1回目は「おりこうさん おばかさんのお金の使い方」(板倉雄一郎 幻冬社 ¥1200)です。「人様をおばかさんなどというくらいだから、きっとすごい作者がすごいこと書いているんだろう」と思い、とりあえず(ネタにもなるだろうし)買ってきてしまったこの本、これを今回のターゲットにします。
「本書を通じて、日本の義務教育では教えてくれなかった『経済とお金』について、経済的教養の高い人への入門を果たそうではありませんか。」(5ページ)とまえがきにあるように、この本はきわめて入門的な本です(「義務教育」と書いてありますが、筆者は高校生くらいの人を対象にしているように見えます)。ですので複雑なことは書いてありません。
本書の構成の特徴は、各項目の最初にある事(投資や買い物)に対しての「おりこうさん」と「おばかさん」の行動を示し、以後なぜそういえるのかという説明をおこなっている点です。最初に具体的な行動例が書いてあるので、自分自身の行動と照らし合わせながら本を読んでいくことができます。説明部分は複雑なことは極力排除しつつも、「割引現存価値」など知っておいたほうがいい言葉、数式を解説しており、そういった考え方を知らない人には意味があるといえるでしょう。
しかし全体として内容には不満です。最初の「おりこうさん」「おばかさん」の行動の紹介ですが、その中には「おばかさん」に「〜という住宅ローンを組む人」、「おりこうさん」に「〜というローンを宣伝する会社」といった、立場が完全に異なった者を比較対称に挙げているものがあります。これはおかしいでしょう。ここはあくまで「家を買うかどうか考える立場の人」で統一すべきです。そうでなければ「賢く住宅ローンを借りる」という話なのに、「銀行業(金貸し)をやらない奴はみんなばか」、もっといえば「その金貸しから一方的に税金を取る国がおりこうさん」と、一般人からみてなんら実用的でない方向に議論が進んでいってしまいます(実際そのように進んでいる部分もあります)。
解説も「ほんとにそういえるのか?」といえる事例が結構あります。例えば「今日100万円か、1年後に120万円与える」という例を挙げています。この例に対し本書では「1年で20%もの運用益なんてだせないから、今日100万円は受け取らず1年後に120万円受け取るのがおりこうさん」と解説しています。この場合確かに利率だけで考えればそうなります。
しかし現実問題として、1年後に120万円与えるなどという口約束を信用していいのでしょうか?本書ではお金をくれるのは「経済的に信用できる人」となっています。ですが1年の間にその人が心変わりするかもしれないし(法律上書面によらない贈与契約は一方的に撤回することができます)、1年後には120万円も与える余裕がないかもしれません。そもそも本書的には「経済的に信用できる」ようなおりこうさんは、投資効果のない人にタダでお金を与えるなどという「おばかさん」的な行動は取らないはずです。これらのことも含め検討すれば、多少少なくとも早めに確実に100万円を受け取っておくことも決して間違いとはいえません。
他の事例についても同様で、多くはごく簡単な計算式だけで解説しています。ですが実際にはその人の置かれている家庭や社会的な状況、税金、法律、景気なども含めて検討すべきです。だからこそファイナンシャルプランナー等は相談を受けたときに、年収や家庭状況とかできるだけ詳しく聞くのです。あとがきなどでそのことに触れてほしいものでした。私なら最後に「おばかさん=ここに書いてあることを盲信し、そのつど冷静に考え利益を追求することをやめた人」と書いたでしょう。
批判的な文章が多くなりましたが、最初に触れたように本書はあくまでマネー初心者向けです。そのため複雑な要因は排除し、簡単な解説に終始しています。だから「これからマネーについて考えていこう」という人はまあ値段も安めですし、買っても損はしないと思います。それ以外の人、とくにある程度の知識がある人は立ち読みで十分です(本書的に言えば、知識があるのに買ったらその人はおばかさんです。つまりそれは私のことですが)。

